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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第10章 夏の訪れ

海に入ってみると、最初にあった怖さみたいなものは少なくなっていた。遠くの船を眺める。

ぼーっとしていると、春ちゃんに写真を撮られた。気づいたらスマホを向けられていて、驚いて春ちゃんの方を見ると、いたずらっぽく笑っている。

「家族3人、初旅行。こんなにはしゃいで濡れて帰ってくるとは思わなかったからさ」

春ちゃんはそう言いつつもう1枚わたしのことを写す。さっきよりも照れた表情になってしまって、恥ずかしい。

「3人で撮ろう」

意外にも、そう提案してきたのは優だった。

「えー、おっさんの自撮りは厳しいよ」

春ちゃんが苦笑いを浮かべたので、わたしが言った。

「おっさんじゃないよ、ママ」

「ママって」

春ちゃんが吹き出す。

「じゃあわたしがカメラ持つ」

春ちゃんからカメラを受け取ると、内カメラにした。真ん中にしたわたしに、2人がぎゅっと近寄る。
なんだかそれがうれしくて、笑ってしまった。

掛け声なしにシャッターを切ったら、両脇からブーイングが来て、それもまたおもしろくて笑った。

その後も、何度か海に入ったり、砂浜で貝殻を拾ったりして過ごした。たくさん遊んで、気づけば夕方も近い。

「そろそろ、移動しようか」

3人で砂浜を歩いた。
車に乗り込んで、そう遠くない旅館まで移動する。
チェックインした時には、すっかり西に日が傾いていた。

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