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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

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「んぁっ……あっ、やだ、んっ、ん、あっ……ん」

例によって、優と春ちゃんの寝室にいる。
3人で暮らしていて、唯一嫌いな時間。それが月一回のこの時間だ。

「咲、嫌ならちゃんと力抜くよ、終わんない」

春ちゃんの声がいつもより冷たい。ここに来るまでに一悶着あったからだ。
力なんて、抜けるはずもない。
治療の時に優しくない春ちゃんは怖くていやだ。
でもこうなってしまったのは、わたしのせいだと認めるのもいやで。
せめてもの抵抗で、気持ちよさに飲まれるのを我慢しながら、必死に息をついて刺激を受け入れることしかできない。

月一回の治療は、どんなに嫌でも回ってくる。
夏休み最後の日。明日から学校というこの憂鬱な日の夜に、更に気分が下がるような治療が、わたしの気持ちを追い詰めていた。

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