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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

「あ! 前に、井田先生に怒られてる子を見たことあるって言ったでしょ? それ、樫木くん」

「へぇ、怒られるタイプか……」

なんか……親近感。
あの怖さを知っているなんて、なかなかいない。
仲間みたいな感覚になって、少し嬉しかった。
怒られることは全然、嬉しくないんだけれど。
焦ったり、嬉しかったり、こんなにもコロコロと色んな気持ちになる自分は、初めてだった。

「うん〜、なんか意外なんだよね。あの時はなんで怒られてたかはわからない。井田先生のクラスって、生活記録ノートあるから、溜めちゃったのかもねぇ」

いっちゃんは、手を止めて考える。
その時のことを、思い出しているようだった。

「井田先生、ほんとに……怒ってる時、鬼の形相って感じじゃない?」

わたしは小さな声でそっと言った。
いっちゃんはクスクスと笑う。

その時だった。

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