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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

「んー? 誰が鬼の形相だって?」

わたし達の背後から突然、井田先生の声が聞こえて、肩がビクッと動いた。
こちらに近づいてくる気配を全然感じていなかった。
あわあわと焦るわたしをよそに、いっちゃんは、何事もなかったかのように、朝顔の種を集め続ける。

いっちゃん、ずるいよ〜〜!!

心の中で叫んでみる。

焦ったせいで、わたしは持っていた朝顔の種を少し零してしまった。

「あ、わっ!」

「……さっちゃん! 焦りすぎ」

いっちゃんは笑いを堪えながら、わたしの落とした種を拾い集めた。
その様子を見た井田先生がいたずらっぽく笑う。

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