優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第11章 落し物に気づく時
「鍵、あったよ」
「ほんと! よかった」
わたしの家の鍵なのに、いっちゃんは自分のことのようにほっとしているようだった。
「樫木くんが見つけてくれたのを、井田先生が預かっててくれてた。探しても、無いわけだよね」
そう言った時に、いっちゃんは一瞬だけ驚いたような表情をして、また頬を緩めた。
「それは良かった。……さっちゃん、来週さ。一緒にお弁当食べようよ。昼休み」
そういえば、いっちゃんとは放課後は一緒に過ごすけれど、お昼は一緒になったことがなかった。
「うん」
なんで、いっちゃんがこのタイミングで、この提案をしてきたのかがわからない。
わからないけれど、断るような用事もないし、いっちゃんと2人でお昼を食べられるのが嬉しくて、頷いた。
「じゃあ、決まりね! 来週の楽しみが増えたねぇ〜」
いっちゃんは、何事も無かったかのようにわたしの方を見て笑う。わたしが泣いていた理由を訊くこともしなかった。
それに、助けられる。訊かれたところで、なんて答えていいか、わたしにはわからなかったから。
9月下旬の夕方は、夏より日が傾くのが早い。
わたしたちは伸びていく影を追いかけるように、ゆっくりと歩き始めた。
「ほんと! よかった」
わたしの家の鍵なのに、いっちゃんは自分のことのようにほっとしているようだった。
「樫木くんが見つけてくれたのを、井田先生が預かっててくれてた。探しても、無いわけだよね」
そう言った時に、いっちゃんは一瞬だけ驚いたような表情をして、また頬を緩めた。
「それは良かった。……さっちゃん、来週さ。一緒にお弁当食べようよ。昼休み」
そういえば、いっちゃんとは放課後は一緒に過ごすけれど、お昼は一緒になったことがなかった。
「うん」
なんで、いっちゃんがこのタイミングで、この提案をしてきたのかがわからない。
わからないけれど、断るような用事もないし、いっちゃんと2人でお昼を食べられるのが嬉しくて、頷いた。
「じゃあ、決まりね! 来週の楽しみが増えたねぇ〜」
いっちゃんは、何事も無かったかのようにわたしの方を見て笑う。わたしが泣いていた理由を訊くこともしなかった。
それに、助けられる。訊かれたところで、なんて答えていいか、わたしにはわからなかったから。
9月下旬の夕方は、夏より日が傾くのが早い。
わたしたちは伸びていく影を追いかけるように、ゆっくりと歩き始めた。