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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

もう少し時間が欲しくて。でも、嫌なことへのタイムリミットは刻一刻と近づいてきていることがわかっていた。
……なんとか言葉を続けて、時間を稼ごうとした。

「……これ、食べてから」

俯きながら言うわたしは、チョコレートをぎゅっと握りしめる。

「……中身溶けるぞ」

優はため息をひとつつくと、わたしの手からチョコレートを取り上げた。個包装になっている包みを破く。

「はい、あーん」

「あ……」

春ちゃんが後ろからそう言うので、おのずと口が開く。
口の中でじわじわと甘みが広がっていった。
……さっきまで食べていたものと一緒なのに、なんか味が違う気がしてしまう。

なるべくゆっくり。そう思ったけれど、チョコレートはすぐに溶けだしてしまう。
両手を掴まれたまま、口を動かしていると、春ちゃんが言った。

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