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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第14章 文化祭

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わたしといっちゃんは、放課後、家庭科室にいた。黒板には井田先生からのメッセージ。

『頑張れ! 火事にならない程度に。なんかあったら職員室ね! 井田』

「火事にならない程度にって、相当なめられたね、わたしたちも」

泡立て器とボールを抱えたいっちゃんが、不慣れな手つきで中身を掻き回す。不機嫌な顔と、泡立て器の動きは釣り合うはずもなく。

いっちゃんが、小麦粉の袋を手に取る。
……突然大量の小麦粉をボールに入れようとしたため、わたしは慌てていっちゃんの右手を掴む。零れた小麦粉が、少しだけボールの中へ入った。

多分、なめられる原因はここら辺にあると思ったことを、いっちゃんには言わない。

「いっちゃん、待ってそれ!分量違くない?!」

わたしの声に焦りを顕にする。
いっちゃんはどうやら、料理があまり得意ではないらしい。これは今の動植物部にとって、致命的なところだった。

「え、え? だってこっち書いてあるじゃん」

指を指すのは、作っていたメニューとは全く違うもの。なおも小麦粉から手を離さないいっちゃんを見て、笑いそうになる。

「そうだけど! 小麦粉入れるのにバターのグラム数見てどうするのさ!!」

「あ!?! え、ごめん、間違えた、ほんとにごめん」

慌てて小麦粉から手を離したいっちゃんに、笑いながら突っ込んだ。

「ねー!!いっちゃん、しっかりして!」

「ごめんごめん!!」

もう一度、手を動かす。
……お菓子作り初心者2人では、今回のミッションは相当厳しいものがある。
重々承知の上で、わたしたちにはこうしてお菓子を作るしか選択肢はなかった。

事の発端は、数日前に遡る。

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