優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第14章 文化祭
「そっかそっか、頑張ったね」
体ごと抱きとめるような言葉に、胸が苦しくなった。でも、抱えている胸の痛みとは違う。
春ちゃんにしがみつく力を強くする。
「だーいじょうぶ、大丈夫。ちゃんと、痛くなくなるからね」
あやすように、頭を撫でてくれた。温かさに身を委ねたら、湧き上がるように涙が出て、止まらなかった。
しばらくそのまま抱きついていると、春ちゃんがふっと笑った。
「やれやれ、仕方ないね。……こんなところでずっと泣いてたら、風邪ひいちゃうよ」
そっと体を引き離して、わたしの顔をのぞき込む。
「もー、ぐちゃぐちゃだ〜」
言いながら、目元の涙を指で拭ってくれた。
その温かい両手でわたしの頬を包み込む。
「大丈夫、大丈夫」
……その日はずっと、春ちゃんが傍で囁いてくれていた。
眠りに落ちる寸前、意識が遠くなっていくその時まで、ずっとどこかに、春ちゃんの体温を感じていた。
うとうとと、温かい体温の中で眠りにつく時、遠くの方で優の声がした。
「大丈夫か?」
「うん、いまやっと寝たとこ」
「……すまんな、早く帰って来れなくて」
言いながら、優がわたしの頭を撫でる。
ゆっくりと、優しく、その大きな手はわたしの頭を包み込む。
大きなベッドの上、寝ているわたしを間にして、優と春ちゃんがそこにいる。
しばらく、3人で寝ていなかったなぁ……
そんなこと考えているうちに、本格的に眠りが深くなっていく。
ぎゅっと目を瞑ったら、目頭に涙が伝った。