無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

あれ。あれ…………。なんで……？

溢れる涙を、自分ではどうしようもできなくて、困惑した。
遂にはしゃくりあげて泣くわたしの顔を、春ちゃんは冷静に覗き込む。

｢咲……なんかあったね？｣

深く息をつきながら、その顔は困ったような、優しい笑みを浮かべていた。

涙がどっと溢れて、止まらない。


｢……わたし……わたし……｣


一生懸命、言葉をつなごうとするのに、声にならない。
うまく息が吸えなくて酸素が足りない、そんな気がしてしまう。


｢咲。ゆっくりでいいよ。大丈夫｣


必死で息をするわたしを、見かねた春ちゃんがぎゅっと抱きしめた。
躊躇いなく力強く、でも、優しく。
高鳴っていた鼓動が、ようやく落ち着く場所を見つけたようだった。

｢……は、るちゃ……ん｣

その温かさに心の底から安心してしまう。
焦って息をするわたしを、落ち着かせるように、ぎゅーっとぎゅーっと力を込める。

自分が思ったより心細くて、ずっとこうして欲しかったんだと思い知る。
早く落ち着きたくて、春ちゃんにしがみついた。

｢うん、どうしたの？｣

春ちゃんは、そんなわたしをゆっくりと待っている。
降ってくる言葉には、魔法がかかっているみたいだった。そっとわたしの体を包み込む。
ほっとしたら、ずっと胸にあった言葉も、一緒に溢れ出た。

｢胸が痛い……心が痛い……。……わたしの好き、全然無くならないの。伝えたいって思って、もうやめたと思ったのに……なんで……？｣

身体を震わせて、その全部をつかって声を出す。
抱きしめながら、しっかりとわたしの言葉を受け止めてくれていた。

春ちゃんは、それを聴いた後に、少しだけ間を置いた。