優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第15章 文化祭(後編)
「ねぇ、このデリヘルのサイト、怪しくない?」
言いながら優に見せた画面は、ゲイ専用のデリヘルサイトで、男性が男性の家に行くシステムだった。
一応、求人のようなものも募集していて、登録はごく簡単なものであった。
これなら、中学生の由貴でも、そういう事ができてしまう。
「……ッゲホ、お前…………時と場合を選べ。食事中だぞ。食欲満たしておいて、同時に性欲まで満たそうとしてんのか? ってか、だいたい食事中にスマホ触んな」
「……あー、悪い」
思いがけずに大量の不満が優から吹き出て、苦笑する。由貴がやっていることは、おそらく、体を売ること。
それも、同性を対象にして。
サービススタッフの顔写真を見ていると、由貴にそっくりな男の子が出てきて、ビンゴだと思った。
「ねぇ、優……」
「あ? なんだ、早くそれ置いて飯に集中しろ」
「この子、呼んでいい?」
「……は?! いや、お前……そういうのが好みか…………」
「じゃなくて、この子、多分うちの生徒」
「……うちの生徒って……春斗が持ってんの、中学生だろ……」
一瞬で、優は事の重大さを理解する。
重い沈黙が、食卓を流れた。優がひとつ、ため息をついて、呟いた。
「……勝手にしろ」
すかさず、予約登録画面に進む。
「じゃあ、次の土曜日。優、日勤だよね? 優の名前で登録するね」
「ちょっと待て、おい!!」
「だって俺の名前だと気づかれる。協力してほしい、この子の将来がかかってる」
懇願すると、優は諦めたように呟いた。
「……1回だけだぞ」
「ありがとう!」
優も、仕事柄、子どものこととなると放っておけないようだった。
そうして、週末がやってくる。
土曜日の夜9時。家のチャイムが鳴った。