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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第15章 文化祭(後編)

客足が少し落ち着いた昼過ぎ。

見慣れた顔が、人混みから顔を出す。

「あ!優!!」

わたしが声を上げると、オーブンに張っていた由貴くんも、店の表に出てくる。
飲み物が3本はいったビニール袋をわたしに手渡しながら優は言った。

「お疲れ。これ、差し入れ。一華から偵察頼まれてな。マフィン買って来いって……」

「ありがとう! いっちゃん元気?」

「あぁ、元気だ。まだ外には出られないが。今週中には一般病棟に移れると思う」

言いながら、にっこりと笑う。ほっとした空気が流れていた。

「優さん、お久しぶりです」

由貴くんがぺこりと頭をさげる。

「おう、久しぶり。一華の発作の時は話せなかったしなぁ。……なんか、こうやって見ると、また身長伸びたか?」

「うーん、5cmくらい」

「道理で」

優は、嬉しそうに笑いながら由貴くんの頭を撫でる。いっちゃんや由貴くんと関わる優の姿は、なんだか新鮮だ。

わたしは紙袋とトングを持ちながら咳払いをひとつすると、優に訊いた。

「何個ですか?」

「一華と早乙女先生と、俺の分だから、4つかな」

「ん? 3人なのに4つなの?」

「俺が2個食べる」

それを聞いて、一緒に店番していた井田先生が吹き出す。

「昼飯まだなんだ、許せ」

「かしこまりました」

わたしと春ちゃんが顔を見合わせる。

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