優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第15章 文化祭(後編)
「こんなに客足途切れないもんなの?」
「わかんない、由貴くん、あと何分でできあがる?」
「5分で20個上がる予定」
「了解! 間に合いそう。生地用意しとくね」
「ありがとう。次、30個分で試してみて」
「わかった!」
由貴くんがオーブンの前に陣取りながら、火の調節をしていく。何度もオーブンを稼働していると、焼き時間に誤差が出てきて、焦げるか焦げないかの瀬戸際だと言う。
由貴くんがそんな状態なので、わたしと井田先生で店番をして、たまにわたしが生地つくりに回る。
店番も容易ではない。
マフィンの焼きが追いつかなくて、待ち時間ができると、行列ができる。
オーブンで焼く甘い匂いが、客足をさらに増やす結果になった。