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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第16章 3人の年越し

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その日は眠れなかった。

いつもなら、迷わず隣の部屋に行く。
優と春ちゃんが寝ているところ。

「眠れない」って言ったら、きっと2人の真ん中に寝せてくれる。それで、寝るまで頭を撫でたり手を繋いだりしてくれるはずだ。

でも今日は、部屋に行くことはできない。
せめて、優だけが部屋にいるならよかったけれど…………春ちゃんが部屋にいる。

あぁ、無理、行けない。

ため息をついて、寝返りをひとつ打つ。
壁の模様を手でなぞりながら、眠気が来るのを待とうとした。

でもどうしても眠気は来ない。
頭の中をぐるぐる回るのは、今日の夕方の出来事。
枕元にあった、壊れてしまったいっちゃんのお守りをぎゅっと握りしめると、目をつぶった。

……悪いのはわたし。でもここまでへそを曲げてしまったから、収拾がつかなくなっていた。

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