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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第17章 願いごと

もう一度、抱きしめる手に力を入れた。
できるだけ、ゆっくり言葉を紡ぐ。



「駄々、こねていいよ。

咲の悲しい気持ち、我慢しなくていいよ」





今にも泣き出しそうな咲の頭を、胸に埋めさせる。頭を撫でたその瞬間、弾けるような咲の気持ちを聞いた。



「いやだ、行かないで!!! 春ちゃん、遠くに行かないで!!!」



わんわん泣く咲。
しゃがみこんで、ぐっと抱きしめる。
今はもう、受け止めることしかできない。

「ごめんね……ごめんね、咲。願いごと、叶えられなくて」

長い時間、ずっと咲を抱きしめていた。
叶えられない願いごとの代わりに、ずっと。
咲が静かになったとき、優がそっと咲を俺から引き離して抱き上げると、咲をソファに座らせた。


優が横に座ると、咲は力を無くしたように、優の膝に頭を預けた。
泣いている間もたくさん思考を巡らせて、疲れてしまったようだった。



「いっぱい泣いたな」



優が、咲の背中をそっと撫でると、目を閉じて……。


そのまま、咲は深い眠りに落ちていった。

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