優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第17章 願いごと
「わ……たし……わたし……、3人で一緒にいたいって神様にお願いしたのに……」
震える声で、咲がそう言った。
あぁ、初詣でそんなお願いを……。
その尊い願いを叶えられない罪悪感を背負う代わりに、頭をなでた。
「ごめんね、咲。今までずっと言えなくて」
咲が俺を、真っ直ぐ見つめた時。
1粒だけ、大きな涙が頬を伝って零れ落ちた。
まだ何かを祈る、流れ星のように。
「はるちゃん……いやだ、行かないでって言っていい? ……春ちゃんの、家族のこと……いまは全然……考えられないの、ごめんなさい」
「咲、謝らないで」
突然の咲の懺悔に、しゃがみこんで、咲の体をぎゅっと抱きしめる。
きっと咲は、この短い時間で、俺の気持ちも俺の家族の気持ちも汲んでいた。
それでもう充分だった。
あとは、この涙を、思ったように流せる場所をつくってあげるだけ。