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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第18章 揺れる日々

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咲に話をしたその日から、咲は春斗の後を追いかけて過ごしていた。


一種の、退行のような。


いなくなる不安からか、春斗の服の裾を握ってついてまわり、落ち着いているときは春斗から家事を教えてもらっている。

不安と、大人にならなきゃという気持ちがせめぎ合って、ひとつの身体の中で戦っているようだった。



夜は、ほとんど1人で寝られなくなった。

眠れないと、俺と春斗の部屋にやってくる。
そうして真ん中で、安心したように眠りに落ちる日が続いた。

ある日、咲が眠りに落ちる前、握った咲の手、指先がボロボロになっていることに気づく。
見ると、ささくれをめくったような跡が幾つもあった。

……軽い自傷行為のようだ。

春斗もそれに気づいていて、その指先を見て悲しそうな表情をする。


咲の心に負荷がかかり、相当ストレスを溜めている。

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