優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第4章 それぞれの午後7時
きっとここにいるんだろう。
そう思って、俺は屋上のドアに手をかけた。
春斗が医者だった頃。
落ち込む度にここにくる彼を、見つけたり待ち構えたりして、よく慰めた。
優しいくて繊細な彼だからこそ、誰よりも患者に寄り添って、傷ついていた日を思い出す。
案の定、屋上のベンチに春斗は座っていた。
月明かりに照らされ、柔らかく吹いた春の夜風に髪の毛をなびかせている。
俺が入ってくる物音に気づき、振り向くと、「お疲れ様」と笑顔を見せた。
春斗も幾分か疲れたような顔をしていた。
近づいていき、並んでベンチに座ると缶コーヒーを手渡した。
「ありがとう」
春斗は受け取るが、手の中で缶を弄ぶ。
俺は、自分の分のコーヒーを開けると、口をつけた。
コーヒーの苦味が、ゆっくりと胃に落ちて、染みていく。ひと口飲んでから、間違えて無糖を買ってしまったことに気づいたが、今は感覚的に、この苦味がちょうどいい気がした。
そう思って、俺は屋上のドアに手をかけた。
春斗が医者だった頃。
落ち込む度にここにくる彼を、見つけたり待ち構えたりして、よく慰めた。
優しいくて繊細な彼だからこそ、誰よりも患者に寄り添って、傷ついていた日を思い出す。
案の定、屋上のベンチに春斗は座っていた。
月明かりに照らされ、柔らかく吹いた春の夜風に髪の毛をなびかせている。
俺が入ってくる物音に気づき、振り向くと、「お疲れ様」と笑顔を見せた。
春斗も幾分か疲れたような顔をしていた。
近づいていき、並んでベンチに座ると缶コーヒーを手渡した。
「ありがとう」
春斗は受け取るが、手の中で缶を弄ぶ。
俺は、自分の分のコーヒーを開けると、口をつけた。
コーヒーの苦味が、ゆっくりと胃に落ちて、染みていく。ひと口飲んでから、間違えて無糖を買ってしまったことに気づいたが、今は感覚的に、この苦味がちょうどいい気がした。