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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

「……大丈夫か?」

春斗の顔を見ずに、呟くように言った。
生死を彷徨う人の場面というのは、いくら見ても慣れるものではない。その重さに耐えかねて医師を辞めた春斗には、今日の一件で相当負荷がかかっただろう。生死を彷徨っていたのは、彼の生徒だったんだから、なおさらだ。

ふっと空気が緩んで、春斗が笑った。

「大丈夫……と言いたいところだけど……流石に堪えたわ」

春斗は弄んでいたコーヒーの缶をぎゅっと握りしめて、声を震わせた。恐怖か不安か、後悔か……彼の心の中に何かがぐっと押し寄せているのがわかった。

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