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Bye-Bye

第1章 出会い

奥野 誠司

ドが付く田舎生まれの誠司は、この春そこそこ有名な進学校に合格し、今日は入学式である。

親元を離れ、高校生にしては珍しく独り暮らしすることになった誠司は、急行で3駅先の高校に向かう。


(高校では、楽しい学校生活になったらいいな・・・)


色白でひ弱な誠司は、中学までいじめを受けていた。周囲の顔色を伺いながら、いじめを受けないようなんとなく周りと合わせる、そんな生活を送ってきた。


(せっかく解放されたんだから、いい友達を作りたい)


気分を一新するために詰襟の学生服は新調した。真新しい学生服を着て、駅から学校に向かう。学校までは歩いて約10分。

同じ方向に向かって歩いている学生は、おそらく同級生になる人達だろう。やはり進学校というだけあって、真面目そうな人が多い。


「1年2組」

これが、誠司のクラスである。2年からは文系と理系に分かれ、男女の比率がクラスで変わるらしいが、1年はまだ分かれないので、男女同じくらいの割合である。

自分の席は後ろから3番目。後ろの席の生徒はまだ来ていない。まだ、周りと話す勇気のない誠司は、なんとなくうつむいて座る。


後ろの席の生徒が来た。長髪で髪は茶色に染め、なかなかのヤンキーな風格で、他の生徒から見たら明らかに浮いている。制服の丈も少し短い。ただ、顔は「イケメン」と言われる顔だ。

(あんまり関わりたくないな・・・)

と、誠司はとっさに思った。どうしても中学までの「いじめを受けた」記憶と重なってしまう。


そんな中、担任が来て全員が体育館に移動し、入学式が始まった。入学式ではお決まりの校長先生の長い祝辞のあと、生徒全員の名前が呼ばれる。


前園 翔太

イケメンヤンキー風の生徒の名前だった。

よくよく見渡すと、クラスは違うが数人ヤンキー風の生徒がいる。特に注意を受けている様子もないので、生徒への規制は緩いのだろう。

教室に戻ると、少しずつ隣同士の生徒の会話が始まった。誠司も隣の子と自己紹介や出身中学の話をしていると、

「誠司君だっけ?前後どうしよろしくな!」

と翔太が声をかけてきた。

「あ、前園君、よろしくね。」

と誠司も返した。

(思ったより怖くなさそうな人だな)

と誠司は思った。


・・・まだ、この2人を待ち受ける未来は知る由もなかった。

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