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龍と鳳

第11章 Fly for it!

「下の方調子はどうだイェーイ!!
手を上げろチョーシュー!!!」

初めて自分の翼で天高く昇った翔が、大得意で興奮してる声が遠く頭上から聴こえる。

「ふふっ、あいつ、よっぽど嬉しいんだな」

地べたに寝かせた人の子は顔色がなく、全身泥まみれで着ている服もボロボロだ。

怪我がないか確かめようと傍らにかがみこむと、顔にあった赤い擦り傷が眺めているうちにどんどん薄くなり癒えていく。

「お? 神様がご加護をくださったのか?」

返事を期待しないつぶやきに、思いがけず応えがあった。
神域で起きたことなら、当然神様は全てご存知だ。

『儂(わし)ではない
その人の子は鳳凰が成鳥になる瞬間に立ち会ったのだからのう
儂の加護ではのうて鳳凰の加護じゃな

鳳凰は不死鳥とも云われる翼持つ存在の王
五色の炎を纏うその気に触れると寿命が延びる
怪我などあってないようなものじゃ』

「へぇ、そうなの?」

頭上で旋回しながら、ぷっちょへんざ~~~~、って歌ってる声からはあんまり威厳は感じられないけど(笑)。

オイラにとっては翔は翔だな。

まったく、チビのくせに家出なんかするから、案の定騒ぎに巻き込まれた。

飛べて良かったな、と褒めてやるべきか。
危ないだろう、と叱るべきか。

怖い思いをしただろうし、今夜は特別に一緒に寝てやっか。

ぷぷっ、と笑ってたら、神様がからかいの響きを放ってニヤニヤ笑う気配が伝わってくる。

「なんで笑うの?」

『うんにゃ?
まぁ、智にもそろそろ良い頃合いじゃろう
何ごとも修行じゃ』

「?」

不思議に思って首を傾げていると、歌いながら下降していた翔の気配が大地に向かって伸びてきた。

地上に降り立った極彩色の光が凝縮して人形(ひとがた)をとる。

オイラの前に現れたのは、すっかり大人になった翔の姿だった。

「智っ、ニノはっ?」

興奮して頬を赤らめながら、嬉しそうに駆け寄ってくる。

え。
誰だ、こいつ?
翔か???

迷彩柄のパンツに白の上着姿で服装はいつもと変わらないのに、全身から炎のようにゆらゆらと極彩色のオーラが立ちのぼってた。

肩、胸、腕の筋肉が程よく盛り上がって、スッキリ伸びた脚が長い。

ていうか、オイラより背が高くね?


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