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龍と鳳

第12章 【思い出編】Memories

実はしょーちゃん、人形(ヒトガタ)の時は高いところがダメなの。
おっかしいよねぇ、本性が龍なのにさ。
松兄にもそれでよく揶揄われてたんだけど。

本人が言うには、人形になってしまうと何か足が浮いてるのが不自然な感じがしてソワソワするんだって。

お社で人形になってるしょーちゃんはさ、凄く落ち着いてて大体いつも口元が笑ってるし、大人のヨユーっちゅうか、堂々としてるのね。

神職と同じ白装束が清々しくて言葉遣いも丁寧だし、でも謙虚で上からな態度とか絶対しない。
とにかく、ちゃんとしてる。
んでもオイラが落っこちた時はよっぽど慌ててたんだろうね。

着物を出す余裕が無かったみたいでスッポンポンでさ。
オイラもまだちっこくて自分で服は出せなかったし、二人で裸のままぴゅーって。

「おおおおおおおおぉまいがああああ
!!!!」

しょーちゃんは何か奇声を発してたよ。
あれは結構ヤバかったな。ははははっ!



お山の神様が落ちる速さを緩めてくださって、やっとしょーちゃんも我に返ったみたいで。
結局、地面に激突する前にオイラたちは龍になって無事だったんだけど。天と地の間でしょーちゃんが龍に戻る姿は、本当に綺麗だった。

輪郭がまず緋色に輝き始めて、バーッて存在自体の波動が上がるんだ。
ほんで、形が一旦揺らいで。
凝縮して光そのものになってから、龍の形に変化してく。

抱っこされたままのオイラは、しょーちゃんの魂そのものであるエネルギーに包まれて、共鳴してさ。二人のエネルギーが混じり合って。

ああ、この感覚、知ってる!
前にオイラ、こうやってお空の上に居た!!

思い出して叫ぶように伝えたんだ。

『しょーちゃん! オイラお空の上でこれ見た!!』

『ん~? 何~?』

『しょーちゃん、オイラをむかえに来てくれた!!』

どんどん記憶がよみがえって、何だか感極まってきて。

美しい光が池の鯉みたいに見えてたこととか、それが小さくなって消えたこととか。
見ていた時の切ない気持ちが迫って来てさ。

『うえぇ~~ん!!』

『おっ? なんだ、どうした?
智? どっか痛くした?』

『うええええ~~~!!』

いつもの定位置、しょーちゃんの頭の上で鬣(タテガミ)に顔を埋めながら、無性に泣けた。

だから、つまり。
オイラは、しょーちゃんのことが言葉に出来ないくらい大好きだったんだ。

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