メランコリック・ウォール
第41章 禁断の暴露
オサムは部屋に引きこもったままだが、それ以外はいつもどおりに事が進んだ。
作業員たちが出払ったあとで、ゆりちゃんが興奮気味に言う。
「昨日、大丈夫でした?なんか皆さん、いつもどおりに見えたけど…。オサムさん、どうしたんですか?」
「えっと…とりあえずあの人は今日からしばらく謹慎ってことになって」
「えぇっ?!まさか…」
「うん。桜子ちゃんとの事を親方が知っちゃう流れでね…」
それから私は昨夜の一部始終をゆりちゃんに説明した。
たまに2人で飲むことがある、ちょっと高価なローズヒップティーを淹れた。
「あぁ…癒やされる…」
とっさに出てしまった私の言葉に、ゆりちゃんが笑った。
「アキさん、大丈夫ですか?」
「ん…。自分が蒔いた種でもあるし、しっかりしなきゃ。」
オサムの不貞によって親方の怒りを買い、謹慎処分となったはいいが、私とキョウちゃんの関係についてや私がオサムと別れたいという部分が薄れてしまったようにも思える。
けれど、とにかく私は自分の目的を果たすために努めるのみだ。
「そうそう。ゆりちゃん…」
「はい!」
「私がこんなこと言わなくても、とっくに考えてるかもしれないけど…」
「え?なんでしょう?」
「…転職とか、する気あるかなって。」
「!!?」
「こんな事になっちゃったし…、私も、ここ出ていくためにいろいろ準備するから…ゆりちゃんもここを出ないかなって。」
こんな泥沼のような会社にいたくもないだろうと考えた。
私に気を使って言い出せないのかもと思って切りだしたけれど、ゆりちゃんは本当に転職など考えていない様子だった。
「就活かぁ…。なかなか気が向きませんけど、考えてみますか!ふふ」
「ゆりちゃんは優秀だから、どこも欲しがると思うなぁ。私のつながりで良かったら、いくつか話聞いてみない?」
「ホントですか?」