メランコリック・ウォール
第42章 異国の地へ
「お~!日程決まったんだね。」
「来週です!こんなの久しぶりで、緊張するなぁ…。」
「大丈夫!もうゆりちゃんの良さはいっぱい伝えてあるから。ふふっ」
…
―――2週間後の金曜日、今日はゆりちゃんと食事に行く約束をしている。
仕事を終えるとまたいつものお店へ歩き、ホットワインで乾杯をした。
「ゆりちゃん、これ。」
「えっ?なんですか?」
「お誕生日と…内定祝い。良かったら使って?」
ゆりちゃんはワァワァと喜びの声をあげながら、プレゼントしたアロマオイルのセットやボールペンを眺めた。
「ありがとうございます…っ!嬉しいです。」
「あと4ヶ月くらい…よろしくね。」
ゆりちゃんが新しい職場で勤務をスタートするのは、先方での引き継ぎなども終わる6月を予定していた。
ウォールシイナでも新しい人材を探さなければいけないので、互いに都合の良い話だった。
「こちらこそ…!あと4ヶ月しかないって思ったら、寂しいですけど…」
「ふふっ、そんな顔しないで。きっともっと良い人生になる!ウォールシイナにいちゃ駄目。…って、私が言うのも変だけど(笑)」
「あははっ!」
ゆりちゃんと別れた帰り道、キョウちゃんに電話をかけた。
迎えに行くと言う彼を制し、それなら家に着くまで話していようと言われ優しい気持ちになる。
「楽しかったか?」
「うん。…ゆりちゃんの転職先がすんなり決まって、本当に良かった。」
「そうだな。」
「ね、キョウちゃん。私たち、出会ったあの日からもう1年が経つね。」
「あ…2月か。確かにそうだ。早いな…」
「早いね…。あの日、キョウちゃんすっごくダルそうだった(笑)」
「ふふっ。そうか?でもアキを見て、なんかやる気でたのは覚えてる。」
「本当かな。ふふ」
「本当。俺いい年して、”あ、欲しい”って思ったもん」
「えぇ?可笑しい。あはは。全然分からなかったよ」