メランコリック・ウォール
第42章 異国の地へ
「うん。親方のとこ辞めて、自分の塗装屋を開業する、って事」
「わぁ、すごいね」
「そうすれば1人でも生きてけるから、って言われて。自分の根を張れって」
「…。そうしたら親方はどうなるの?」
「まだ分かんない。もう歳だからナァ、とは言ってたけどな。」
「そっか…。」
「俺、来月には親方のところ辞めると思う。」
「開業するの?」
「しばらく休んで、それから決めようと思ってる。貯金も少しはあるし、九州にも顔出したいし。どう思う?」
予想もしていなかった進展に、私は少し驚いた。
でも、キョウちゃんが独立するのは賛成だった。
「親方のことは心配だけど、キョウちゃんの独立…応援したい!私にもなにか出来るかな」
「はは!もちろん。アキがいなきゃ俺には無理だ(笑)ってその前に、しばらくニートになるんだけどな」
「ずっと忙しくしてきたから、たまにはいいよ。開業するなら尚更、ゆっくりパワーチャージしておかなくちゃ」
「ふふっ。…ありがとう。」
-----
翌週、朝食をとりながら義父が唐突に言った。
「桜子ちゃんね、オーストラリアに行くって」
「えっ?…オーストラリア?」
頭にハテナマークがたくさん浮かぶ。
「うん。事情を知った両親の考えでね。語学留学って言ってるけど、まぁ当然オサムとの関係のせいだろうな…。」
「…。」
「こってりしぼられたみたいだけど、当の桜子ちゃんは結構乗り気みたいでね、それだけが救いだ。」
「そうですか…」
…
「…ーーそれで、今月中には発つみたいなの」
業務が始まると、私は早速それをゆりちゃんに報告した。
「うへぇ…なんだか左遷みたいですね(笑)でも上っ面は語学留学…さすがお金持ち。」
「うん…。」
「あっ、今月中といえば。アキさんに紹介してもらった会社、もうすぐ面談です♪」