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メランコリック・ウォール

第42章 異国の地へ


翌朝、ずいぶん早くに目が覚める。
まだ外は薄暗い。

部屋の片隅には旅の荷物がバッチリで、自分で準備したのに妙に満足した。


キョウちゃんが迎えに来るのは朝6時で、仕事の時よりも早い。

急いでシャワーを浴び、自室で化粧をした。
髪を乾かしていると携帯が光り、見るとキョウちゃんからのメールだ。

[予定通り6時に。平気か?]

短い返事を打つと、ドライヤーの続きをした。


今日は平日で、通常通りの業務があるが、義父はまだ起き出していなかった。
音を立てないようにそっと家を出ると、自販機の前にキョウちゃんの車が停まっている。

キャリーケースを引っ張り、急ぎ足で駆け寄った。

「おはよう!」

「ん。おはよ。ちゃんと寝たか?」

「うん!ばっちり。でも今朝はすごく早く目が覚めた(笑)」


空港への道のりは和やかで、オサムと桜子ちゃんの件で大事件になったことも、キョウちゃんが仕事を辞めた事も、すっかり消え去っているようだった。

私が既婚者であることも…――。



空港に着いたのは7時過ぎで、まだ朝早いのに施設内には多くの人が行き交う。


「アキ、ちゃんと中に半袖着てきた?」

「うん。半信半疑で…(笑)」

「ははっ!大丈夫、あっちはちゃんと暑い。」


まだ日本は肌寒いのに、インドネシアは夏なのか。
なんだか信じられないが、言われたとおりトレーナーの中に半袖を着てきた。


キャビンアテンダントはインドネシア人のようで、素敵なお化粧に上品な帽子、鼻に金色のピアスをしている。


約7時間の空の旅では、途中で食事が出た。
私達はビーフとフィッシュをそれぞれ注文し、分け合って食べた。

「機内食ってすごくおいしいんだね?なんだか意外だなぁ」
「ほんと、結構イケるな。昔は食えたもんじゃなかったけど…」

「最後に行ったのはいつ?」
「もう、10年くらい前。すっかり変わってるだろうな、町並みも」

キョウちゃんも久しぶりのバリ島行きに、期待を寄せているようだった。


私は初めての海外旅行に胸を踊らせつつも、1週間も滞在することに少し不安を感じていた。

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