メランコリック・ウォール
第43章 灼熱
ついウトウトとまどろんだ頃、機内に着陸のアナウンスが流れた。
いよいよインドネシアに到着するのだ。
上空からは諸島が望め、私は声を上げた。
「わあ!すごいね!」
「あ、ほら、泊まるのあそこらへんだよ」
無事に着陸し、手続きを済ませてゲートを出る。
もわんと湿った熱気に包まれ、ここは本当に常夏なんだと感動する。
「暑いだろ?」
促されてトレーナーを脱ぎ、押し入れから引っ張り出してきた半袖姿でタクシーに乗り込む。
「ドコ?」
「クタビーチ」
カタコトの日本語で問われ、キョウちゃんが答えた。
車は走り出し、見慣れない町並みを駆け抜ける。
20分ほど走っただろうか、ほそい道を進んでいったところで「ストップ」とキョウちゃんが言った。
空港で両替した現地のお金を払い、タクシーを降りるとまた夏の熱気が肌を刺した。
町の道路は舗装されていなくて砂ぼこりが立っているが、キョウちゃんが予約してくれたヴィラはとても清潔にされていた。
「高そう…。」
「ふっ。実はそうでもない。物価安いから」
受付では、スパンコールのたくさんついたワンピースを身にまとって現地人の女性が微笑んでいる。
「Welcome」
彼女は丁寧に頭を下げた。
チェックインを済ませるとまた別の案内人がやってきて、連れて行かれた部屋はまるで別世界だった。
開け放たれた観音開きの大きな窓からはビーチが望め、ベッドには赤い花びらが散らされ、バスルームには大きなアロマキャンドルがたくさん並んでいる。
「アサ、8ジ、ゴハン。」
案内人の男性が言うと、キョウちゃんは
「OK」
と答えた。
「ナニカ、アリマスカ?ゴヨウ」
「えっと、バイクレンタルOK?1Week」
「ハイ、ダイジョブ。」
男性が去ると、私は改めて部屋を見渡した。
「本当に夢みたい…。」
「俺いつも、安いコテージだったからさ。こんなとこ初めてだ。すげえなぁ」
たくさん盛られたウェルカムフルーツを手に取りながらキョウちゃんも感心している。