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メランコリック・ウォール

第47章 Red Line


この3ヶ月間、仕事にも行かず、ほとんどをこの家で過ごしてきた。

マサエさんともお父様とも、急速に仲が深まったような気がしている。


「開業するって言うのもな、ここですりゃァええ。なにも、どっかに事務所を構えんでもええだろ?ここにおれ。」


お父様は片足を引きずりながら、ふたつめのダンボールを持ってきた。

6月頃に調子を崩したものの、幸い入院などはしないで済んだ。

最近は以前にも増して顔色が良くなり、とっても元気そうだ。


私から大きな柿を受け取りながら、お父様はもう一度言った。


「ここにおりゃあええ。な?」


心が痛んだ。

自分の罪に、こんなに穏やかな人たちをも巻き込んでいる。


「私は…過ちを犯しました。だけど…。キョウヘイさんと添い遂げたい気持ちは、嘘じゃないです。」


またひとつ、柿を手渡した。


「間違いは誰にでもある。」


低く轟いたその声は私の背中を優しく押し、お父様自身の落とし所でもあるようにも感じ取れた。


見つめ合ったその瞳の奥は、キョウちゃんと同じ色をしていた。

同じ温度で、優しく私を包んでいく。


「親父!俺運ぶから、座ってろよ~」


玄関先から、キョウちゃんがこちらへやって来る。


「生きてりゃァ、どうしたって歩いていかにゃあならん。」

お父様はかすかに微笑んで、私を見つめたままゆっくりと一度、頷いた。

私もまた頷き、小さく「はい」と答えた。


……



九州にやってきてから、4ヶ月が経った。


私はすっかり使い慣れたトイレで、両足を静かに震わせていた。


今にも落としてしまいそうなほど弱々しい力で持っている妊娠検査薬には、陽性の赤いラインが浮き出ている。


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