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メランコリック・ウォール

第49章 トマト


「とにかく、明日トマトたくさん買いに行こう。」

キョウちゃんが嬉々と言ったとき、マサエさんに昼食が出来たよと呼ばれた。


「ど…どうする?」

「どうするって?」

彼は不思議そうに聞き返した。


「お父様とマサエさんに…」

「言ったほうがいいだろ?体調の変化もあるかもしれないし…みんなで大事にしないと。」

「…ぅん…」


嬉しくもあり、複雑でもあった。


2人はどんな反応をするのだろう?


私はまだ、戸籍上は…―――。


少しうつむく私の腰を、キョウちゃんが寄せて促した。


「行こう。飯食えるか?」





キョウちゃんは大げさに私を座らせ、「食えそう?」とか、「水飲むか?」などと口にした。


その様子を見ていた2人は、なにが起こっているのか分からないといった様子で初めは黙って見ていた。


「いただきます!」


元気に食べ始めた私を確認すると、ホッとしたようにお父様が言った。


「なんだ、風邪でも引いたんかと思ったわ。元気そうだな?」


箸を止め、そっとキョウちゃんを見た。


彼はまだ食事に手を付けないまま、ジッとお父様を見つめている。


「…?なんだ?」



「……子供が出来たんだ。」



キョウちゃんがその言葉を発すると、かぶせるようにマサエさんが声をあげた。


「エェーーー!ほんとう!あらあらぁ!ほんとう~~!」


胸に両手をあてて感激しているマサエさんの隣で、お父様は目をまん丸にして私を見た。


「本当かね?」


「…はい。」


私は箸を置いて正座した。


なにからなにまで順番が違う私たちに、言いたいことは山ほどあるはずだ。


しかしそんな不安を吹き飛ばすかのように、お父様は大きな拍手をした。


部屋中に響き渡るほどの大きな拍手だ。


「…でかいよ、音(笑)」

キョウちゃんがプッと笑い、私もマサエさんもすぐに声をあげて笑った。

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