メランコリック・ウォール
第52章 巡
私は九州へ来て半年が経ち、明日からキョウちゃんのおこしたこの会社でサポートをする。
「よろしくお願いします。」
宴の前の乾杯で、キョウちゃんは改まって私に頭を下げた。
「や、やめてよぉ、そんな…」
ニッといたずらに笑う彼の目の下には、薄くなった縫合跡がのびる。
どう責任を取れば良いのか分からず、起こしてしまったとんでもない事態に塞ぎ込んだ日もあった。
しかし私の選択は、キョウちゃんの…この家の、そばに置いてもらう事だった。
出ていったほうが…と、つい漏らした夜、キョウちゃんはこれまでにない焦燥感を放ち、痛いほどに私を抱きしめた。
「頼むから、行かないで」
ああ、私は何度この人を傷つけるつもりだろう。
もう、離れない…絶対に。