メランコリック・ウォール
第16章 ラムネ味
皆がべちゃくちゃと喋りながらアイスで涼をとっているのを確認すると、私はさりげなく詰め所から出た。
キョウちゃん、どこに行っちゃったんだろう…。
詰め所の前には、今まさに手をかけている大きなマンション。裏はまだ空き地で、そちら側には大きな木が立っている。
何気なく裏まで見に行くと、大きな木の陰でキョウちゃんがアイスを頬張っていた。
「あ!」
駆け寄ると、彼は私が座れるようにと地面を払う。
「ん」
「あ、ありがとう…。ね、キョウちゃん…なにか怒ってる?」
「…パンツ見えてたよ」
「えっ!?」
「え、じゃねえよ。油断しすぎ。そんな格好で、男が大勢いるとこでしゃがむな」
「き…気をつけます…」
「ん。よろしい。」
そう言うと、アイスを分けてくれる。
キーンと冷えたラムネ味が口の中に広がった。
「んっー…」
唇の端をつたったアイスの雫を、キョウちゃんが舐める。
「みんなジロジロ見てた」
「あはは、そんなわけないよぉ」
「…」
一瞬黙ったあとで、彼は少し怒った様子で噛み付くようなキスをした。
アイスで冷えた舌が絡まり、すぐに熱を帯びる。
「ん…はァ…ーー」
「アキ。」
「ん?」
「ほんとむかつく」
襟元をずらし、肩まで出される。
「あっ……」
やわらかい作りになっているパフスリーブの服の襟は、簡単に肌をあらわにした。
薄くなってきている赤い痕に唇を押し当て、痛いほどに吸い上げられる。
「キョウちゃ…ん…っ…痛ぃ…よ…」
ジリジリと、焦げそうなほどの日差しが脳内を麻痺させる。
首の汗までを舐め取ると、「おしおきしながら、塩分補給」と彼はおどけた。
白い肌に染みついた鮮やかな赤色を、真夏の太陽がまぶしく照らす。
「恥ずかしいよ、いっぱい汗かいたのに…っ」
「アキの汗は甘くて美味しいんだよ。知らない?」
ククッと笑うキョウちゃんは、少年のように輝いていた。
「そういえばさ」
「ぅん?」