おにぎり短編集
第4章 タイトル未定
「……ねぇ。どこまでしていいの?」
耳にキスを落とされながら、その途方もない快楽への囁きを聞いていた。わたしはぐっと声を抑えながら、意外にも心の片隅に残っていた理性を全面に押し出す。
「……ん……先輩……どこまでしていいか……わたしも決めあぐねています」
残された理性と、この状況から無限に生まれ続ける罪悪感。それから、一線を越えた後、感覚が麻痺してしまうのではないかという恐怖心。
……だけれど、それらの感情をほんの少しだけ上回る好奇心が、わたしの胸をずっとくすぐって離してくれなかった。
だから、これより先に進むことも、戻ることもできないでいる。
「じゃあ、このままかなぁ」
言い渡されたお預けの言葉と、続行される耳へのキスの雨。吸い付き、舐められる音が、快楽への振れ幅を確実に大きくしていく。しかし、それ以上はわたしの中へは踏み込まない。
ずるい、と思った。
この場の状況は先輩の支配下にあるのに、選択権だけはわたしの手にしっかりと握らされている。進むも退くもわたし次第なのに、優勢なのは先輩の方。
その余裕はどこから出てくるのか。
甘んじて受け入れながら、体は快楽の中へ、しっかりと沈められていく。選択を急かすように、先輩の手がわたしのシャツの中に入ってくる。
しっかりとその膨らみを捉えられ、その先っぽを摘まれると、甘い声を抑えることができずにいた。
「ここも弱いんだね」
嬉しそうに、慣れた手つきでわたしの服を捲りあげ、耳元に唇を寄せたままそう言った。