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おにぎり短編集

第4章 タイトル未定

なんでこうなってしまったのかはわからない。
お互い、ちゃんと彼氏も彼女も居たはずなのに。
いたからこそ、油断していたのだ。

……事の発端は、恋愛相談だった。

先輩と2人で外回りを終えて、会社へと戻って来る途中のこと。今日は予定通りに全ての商談が終わり、心配だった大きな契約も無事に終えることができてほっとしていた。
わたしに営業のいろはを教えてくれたのは先輩で、入社当初から2人で組むことが多かった。

「今日、退勤したら飲まない?」

「良いですよ、久しぶりですね」

そう誘われて、迷わず頷いていた。仕事がひと段落すると、いつもそうやってサシで飲んでいたから。

退勤して、近くの居酒屋で他愛もない話をしながら、適当に飲む。先輩とのその関係性は安定していて、居心地が良くて好きだった。
いつもは、仕事の話が多い。プライベートのことは話してもほんの少しで、お互いのパーソナルスペースには踏み込まずに働いていた。

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