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おにぎり短編集

第6章 掃除屋


1.彼女

ピーンポーン。

間延びしたドアチャイムの音を、遠くの方に聞いた気がした。

曜日感覚も時間感覚も狂った頭でぼんやりと起き上がる。どうやらソファで寝落ちしていたようだ。
手の届く範囲にあったスマホを手に取ると、時間を確認する。時刻は夕方5時。

窓から差し込む傾いた日差しが、部屋全体を明るく照らしている。
視界に入ったローテーブルには、原稿と資料と……山のように積まれた紙の束。その1枚1枚が頭に刻み込まれている。
刻み込んだ分、反動がこの部屋だ。
昨日、締切にギリギリ間に合うように提出したその後。そのまま電池が切れるようにソファに倒れ込んだ事を思い出す。
気がついたらろくなものを摂取できないままに、5日が過ぎていて、部屋にはエナジードリンクの缶とペットボトル、額に貼った解熱シートのフィルムが散乱していた。

部屋の惨状に、くしゃみを1つする。
気づいたらブルブルと体が震えた。わたしの温度で温まってしまった解熱シートを剥がして、適当にゴミ箱へと投げ捨てる……けど、入らない。くそ。

そこへ、ダメ押しのように、もう一度ドアチャイムが鳴り響く。


ピーン、ポーン。


明るくのんびりとした音のその裏に、せっかちな性分の人間の素性を隠していることなど、察することはできない。

宅急便か何か? 頼んだっけ?
ここ1週間で自分の生活力は地の底まで下がりっぱなしだ。

まぁいいや、とりあえず出てみるか。

……迂闊、というのは。こういうことだ。
荒れた部屋で1週間、締切の翌日。
大抵来るのはあの人しかいないのに、そんなことにすら、頭は回らない。

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