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戦場のマリオネット

第4章 愛慾と宿怨の夜会






 金粉を散りばめたような白い肢体の蜜壺は、熟れた漿果を想起した。やんごとない身分の女は、昼間のしがらみなど振り捨てたかのように喘ぎ、たわみ、悶え、蜜の匂いを私の指に染みつけた。

 一度浅い眠りに落ちた私は、じっとり湿ったシーツの冷気で目が覚めた。

 汗は、チェコラス夫人の身体も冷やしていた。脱ぎ捨ててあった絹のネグリジェを彼女に着せて、私も身なりを整える。

 回廊に見回り中のメイドがいたので、私は彼女に夫人を任せて、城を出た。



 朝日が昇りかけていた。

 群青の覆った庭園を、まばらに婦人や紳士達が散歩しており、睦まやかに肩を寄せ合う二人組もいた。

 すれ違う彼らと挨拶しながら門へ向かっていると、どこからか母が走り寄ってきた。


「ラシュレ、イリナさんが……!」


 私がチェコラス夫人の部屋にいた数時間、母はずっとイリナを探していたという。婦人達が離宮へ連れて行ったことは確かだったので、彼女は戻ってくる貴族達を捕まえては、イリナを見ていないかと訊いて回っていたらしい。

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