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戦場のマリオネット

第4章 愛慾と宿怨の夜会



「…………」


 感情のない時の流れが、空を明るませていった。

 庭園の景色も随分はっきりしてきた頃、イリナが指を動かした。



「イャぁぁぁあ"あ"あ"あっっっ…………!!」



 空にまで響き渡るような悲鳴だった。

 警備やメイドが駆けつけてこなかったのは、発作的なその声が脆弱だったからだろう。


「いやっ……こ、来ないで……許して……ごめんなさい、ごめ……ごめんなさい………」

「イリナ」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……い……ひっ……ィィ……」

「イリナ、起きて」


 私はイリナの片手を握って、頬に当てる。彼女に体温を感じていたのは、私が夜冷えしていたからだ。頬は死人のようだった。

 未だ悪夢の続きを映している具合の彼女の目を見て、肩に落ちた髪を撫でる。赤みがかった癖毛をとかして、時折、白い塊を見つけては払い落としていると、切れ長の目元を飾った翠の目に、次第に焦点が戻ってきた。

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