
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
ただでさえ邪魔そうだったリディの髪は、この一ヶ月で腰の長さを越えた。
さながら月の光を吸った金糸をメイド達が三人がかりで世話する様を、私は私室のソファから眺めていた。
「いつも有り難う、ラシュレ」
「何度も言う通り、礼なら彼女に」
タオルを抱えたメイド達が、お茶を運んできた別のメイド達と入れ替わりに出て行った。
私はリディをソファに勧めて、ワゴンからティーセットを受け取る。
「イリナのこと、感謝してるわ」
「紅茶、飲めば?」
「ええ。…………」
早く出て行ってくれないかと思う。私がリディに浴室を貸すのは他に当てがないからで、用が済めば速やかに廃屋へ戻したいのに、お茶を淹れてくるメイドのせいで、彼女は長時間ここに留まる。
もし紅茶に厳しい作法があったとすれば、リディの所作こそ正解だろう。そんな見惚れるほどの気品を醸してティーカップを傾ける彼女と何を話すわけでもなく、私もアールグレイを味わう。
本当はメイドに感心している。
イリナは母の部屋に寝泊まりしていることもあるらしいが、リディは私が追い返せば、あの暗く冷たい廃屋へしか戻れない。
