
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
カップを満たす鼈甲色が半分ほど減ったところで、リディの顔色が沈んでいった。彼女は何か言いかけては唇を閉じ、唇を閉じては何か切り出したがっていた。
「お父様とお母様のこと」
来た、と、思った。
私はリディの憂いの理由を知りすぎていた。
「もしチェコラスの要求を、お父様達が拒んだら……」
どうなるの、と、リディは続ける。
それに関して、私が受けた指示はなかった。
軍も奪われ、国民も信仰を失くしたローズマリーが降伏しない可能性は薄いと考えられているからだ。城と土地は取り上げても、王達の命は保証する。筋書きでは、リディの処遇も彼らの返答次第だ。
「やり遂げるだけだ。君は、王達が一人娘を見捨ててでもコスモシザを引き渡さないと思う?」
「お父様とお母様は、優しいわ。でも」
「優しいなら、リディを煮るなり焼くなり好きにしろとは言わないだろ。出来るなら私も、余計な血は流したくないから」
「…………」
ごめんなさい、と、リディが小さく呟いた。自分の声に目を見開き、口を押さえて、彼女はまた同じ言葉を繰り返す。
「無神経だったわ、私」
「リディが気に病むことじゃない。仕方なかったことなんだ。君が今のままでいていてくれれば、それだけで」
「…………」
「愛されてることしか知らないままで、ね」
テーブルに身を乗り出して、私はシャンプーの真新しい香りを放つ頭に手を置いて、そっと撫でる。
イリナもこの手触りを私以上に覚えているのだと思うと、どうしようもない気持ちになった。
