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戦場のマリオネット

第1章 辱められた矜持


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「それで本当にお約束を守ってあげたの?お姉様ってば、意外とお人好し!」


 夕餉の席で、アレットに今日の一部終始を聞かせてやると、彼女は呆れたと言わんばかりに大きな目を見開いた。

 アレット・オーキッドは四歳下の私の妹。

 両親達は職務が残っているため、給仕のメイドの目があるのを除いては、姉妹水入らずの団欒だ。


 廃屋を出る前、私は本当に地上階のリディ・マーガレットのいる独房に立ち寄った。陰気臭い牢獄にはあまりに浮いたドレスを脱がせて、くまなく検閲した。

 リディの妙に落ち着いた物腰と、しとやかな人となりを、ふと思い出す。イリナと違って、彼女は自分達を窮地に陥れたチェコラス人と対面しても、朗らかに微笑んでいた。イリナの安否を不安がっていたのを除いては、王族というのも伊達ではない佇まいだったと思う。


 食後のデザートまで平らげたあと、私達は食堂を出た。

 アレットが甘えた上目遣いを使ってきたので、私は彼女を部屋に入れる。

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