
戦場のマリオネット
第1章 辱められた矜持
「イリナっていう女の人……軍人でも、お姉様と同い歳くらいなのよね」
「見た感じ」
「貴族に生まれたばかりにお姫様のために生きて、見ず知らずの国でこんなことになって、可哀相じゃないかしら」
「優しいね、アレットは。でもそういう生き物なんだ。主人(あるじ)に忠誠を誓った戦士は、その方の持ち物になるんだよ。怖れは誇りをなくすのと同じ。貴族としての誇りがどれだけ大事かをよく分かっているアレットなら、理解出来るね?」
赤みがかった金の長い髪を背中に流して、妹は、エメラルド色の目を真っ直ぐ私に向けていた。
聞いているのかいないのか、分からない。ただ今にもため息をこぼしそうにうっとりと、彼女の視線は私をとろかせようとしている。
「お姉様も?」
…──お姉様も、城主様のお持ち物なの?
何度も私に投げかけてきた、アレットの言葉。
一国の支配層に近しい貴族ほど、面倒臭いものだと思う。アレットが私の本意を聞きたがる度、私はこの妹に、何度同じ答えを寄越してきたか。…………
