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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音


* * * * * * *

 昨日イリナを連れ帰ったあと、母はずっと彼女につきっきりだった。夕飯の席に母がいなかったのも、彼女を着飾らせて外へ連れ出していたからだという。

 私がそれを聞いたのは、今朝ようやく解放されたイリナからだ。


「大丈夫よ。私、当分まだここにいさせられるんでしょう。ラシュレとは明日も明後日も過ごせるわ。明日は慌ただしいでしょうけど」

「イリナは信じてくれてるんだ、私が無事で戻るって」


 コスモシザへの攻城は、明日に迫っていた。

 昼にチェコラスの駐屯地に顔を出した私は、隊員達と少し手合わせしたあと、急ぎの職務を手早く済ませて、イリナと屋敷で落ち合った。

 外出に備えて今回もメイドの見立てで一般人に扮したイリナは、リディほどの長さの金髪を三つ編みにして、ブラウンベースの花柄のワンピースを着ていた。私はあの日のような格好をさせられるのを避けて、自前の普段着。


「騎士団のリーダーとして、貴女なんか信じてはいけないと、罪には感じているわ。私は彼らが陛下達をお守りして貴女を捕らえてくれるよう、女神様に祈らなければいけないのに」


 でも、と、イリナが続ける。


「どうかしてしまったんだわ、私。ラシュレともっと別の場所で出逢っていれば、この気持ちとも向き合えたんでしょうね。気が咎めることなく、貴女の無事も願えたんでしょうね」

「願わなくて良いよ、私のことは」

「…………」

「神も女神も、私にはいない。祈りじゃなく、私はこの手で成し遂げる。彼らの過ちは繰り返さない」

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