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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音


 紅茶やハーブの専門店で、コスモシザでイリナがよく飲んでいたという茶葉があったので、私は彼女にそれを贈った。
 ディンブラ茶にメープルの香りをつけたそれは、絶妙な香料の配合が、パンケーキの風味を実現しているという。季節によってはショートケーキ風味も出るらしく、喉が渇きそうだと私が言うと、屋敷に戻ったら飲んでみろと切り返された。


 私達は恋人同士を気取って(今は実際その通りだが)、日の暮れていく街を歩く。

 仄白い空を夜が覆っていく眺めなど今日まで気にも留めなかったのに、今は心底、夜など来るなと思う。


 私はイリナをホテルに連れて入った。家族連れや少し贅沢な一人旅の客も利用する類の、観光の拠点のための宿。

 貴族の別荘地の個室を聯想するスイートルームに、私はディナーを運ばせた。

 色とりどりのエディブルフラワーを添えたガーデンサラダにシーフードベースの冷製スープ、ラム肉のソテーに添えてあったソースはさっぱりとハーブが効いていて、二人して舌鼓を打った。
 デザートのパンナコッタを味わいながら、君の唇の方が柔らかいんじゃないかと冗談を言うと、もう一度よく確かめてみろと返ってきた。

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