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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「良かった……意外と大丈夫なんですね」

「ここまでの道が長いからね。回廊までは燃え移りにくい、ほとんど金と大理石だから」

「すごい……城の間取りで、材質まで分かったんですか?」


 五階に見回りの兵達がいた。騎士団の正装をした彼らは私達に気づくと、銃口を向けた。

 銃声が反響する。

 私はミリアムを引っ張って追っ手を撒くと、小部屋に入った。

 扉一枚を隔てた向こうに、私達を探す声が聞こえる。息を潜めて、彼らが通り過ぎるのを待つ。


「ミリアム、署名文書持ってる?」

「肌身離さず」

「あと五分で六時。見つからず四階まで戻れるかな」

「何かあるんですか」

「毎朝六時、王と王妃は黙祷する。御堂に護衛は連れて行かない。神聖な祈りの時間は、軍人達も各持ち場で頭を下げるんだ」

「詳しいですね。騎士の叙任には明るくないと仰ってたから、そういう事情もコスモシザでしか知られていないのかと」

「時間はイリナに聞いたんだけどね」

「よく聞き出せましたね。まさか隊長、そのために罪人と寝たりなんてされてませんよね?」

「やりそうに見える?」

「……訊かないでおきます。行きましょう、今なら気配はありません」

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