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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「コスモシザの民は、実権をチェコラスの領主に移すことを同意している。女神トレムリエを信仰している者もいない。今後も、そうした動きがあったら処罰することになっている」

「知っています。最後までトレムリエを信仰した民達は、殉じた……と。何故……、お願い、この国と城を引き渡す以外なら、可能な限り応じます。話し合えないか、公爵様にお伝えして……」

「リディは、どうしている?娘に会わせててくれ!」


 これくらいは予想の内だった。真偽はともかく、コスモシザには神話時代に遡るまでの歴史があって、ローズマリーは少なくとも千年以上、この土地を治めてきた一族だ。

 しかし王達はその首を取るまでもなく、既に大半の軍も国民も失くしている。



「ラシュレ……」


 戦慄した王妃の唇が、私を呼んだ。顔を合わせたこともないはずの彼女が、私を。


「貴女にはリディを傷つけられません。私達が国を守ることを選んでも、貴女にはリディに傷一つ……つけられない」


「そうだ、お前はリディの──」


 口を開きかけた王を制して、私は懐に潜ませておいた布を握った。

 持久戦に持ち越しても、私達の優勢ははっきりしている。じきに王達は降参せざるを得なくなる。

 しかし私は、彼らの諦念を促すための次の駆け引きに出る。

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