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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



 左耳のピアスの石は、出生を知らされずに生きていくことになるはずだった私に、顔も知らない両親が、せめてもとつけさせておいたものだろう。
 イリナに会う前、白く艶めく小さな石に触れては、たまに私は本来この家にいたはずの少女を想った。私の歩むはずだった道を進んでいるだろう、コスモシザにいる同い歳の少女を想った。


「愛してる。これだけは、本当」

「そんなの……信じられるわけ……」

「私の気持ちは、イリナの身代わりになることでしか、証明出来ないみたいだね」

「…………」

「信じて。イリナが助かるのを分かってて、ただ君と過ごしたかった。少しの間でも、イリナを私のものにしたくて……。恋人ごっこ、最後に楽しかった。チェコラスのためじゃない。アレットのためでもない。私の命は、君のために──…」



 バシィィィッッ…………



 潔い音が広間に響いた。

 イリナが私の頬を打っていた。



「貴女の顔なんて見たくない!リディ様の……リディ様と私の国を返して!!」



「ミリアム」

「ジスラン様……」


 私に近づいたミリアムが、手枷をかけた。


「お許し下さい、ラシュレ様」


 リディを除く誰もが私に異質な者でも見る目を向ける中、ミリアムはあまりに普段の彼女だ。

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