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戦場のマリオネット

第1章 辱められた矜持



「はぁっ……あむ……お姉様ぁ……」


 若草色のドレスに包まれた小柄な身体に腕を絡めて、今にも折れそうな腰を撫でて、私はアレットの口蓋を舌でくすぐる。歯列を舐めて、大胆に踊る彼女の舌をあやす。

 撞鐘型のスカートに隠れていても、柔らかなまるみを帯びた細い脚がひくひくと震えているのが分かる。おとがいを持ち上げて淫らなキスを続けながら、私はアレットのウエストを締め上げるコルセットの編み上げリボンに指を伸ばして、窮屈なそれを緩めていった。


 優れた容姿も入団の条件になるという騎士団のリーダーには、裸体を見ても特に感じるものがなかった。だのに実の妹の蠱惑的ないじらしさには、理性より生理が先走る。


 君主に仕えてきた貴族として、きっと私のネジは外れている。

 チェコラスに生まれた上流貴族は、女なら君主の定めた相手に嫁ぐか、妻だの母だのになれない事情が認められれば、少女の時期から戦士として育て上げられることになる。どちらにしても、自分の意思を通すことは難しい。


 しかし私達のこの時間と約束だけは、誰も覗き見ることが出来ず、干渉も出来ない。


 重く煩わしいドレスを除くと、黄昏に見た王女と同様、下着だけ残った妹は、愛を注がれるために存在しているありふれた女の姿をしていた。鎖骨に浮かんだ生まれつきの痣も、彼女はコンプレックスだと嫌がっているが、私にはそれが愛おしく、今夜もそこに吸いついた。






第1章 辱められた矜持──完──

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