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戦場のマリオネット

第2章 終わりなき責め苦


 遥か昔、私の先祖に当たる修道女は、女神の信託を授かることで王を補佐していたという。彼女の功績がアイビー家と王室との結びつきを深め、人々の霊的なものへの信仰が薄れた今も、コスモシザ王国には女神の加護があると信じられている。

 アイビー家に生まれた時点で、私が王女リディ様の騎士になることは決まっていたらしい。
 らしい、というのは、幼い頃の記憶が断片的に途切れていて、コスモシザの伝統についていつ知ったかも覚えていないのだ。ただ物心ついた頃、リディ様という一歳下の王女を遠目に見て、お近づきになれる日を待ち望むようになったのははっきりしている。


 ただ一人の女性に仕えて、精神的な愛を誓う──。

 名誉騎士の風習は、海外にもあると聞く。コスモシザのように宗教的な意味合いはないにしても、愛に関しては、異国の方が感心出来る。


 騎士団にいる隊員達は、その多くが男だ。稀に女がいる場合、彼女らのほとんどには恋人の戦死や不本意の政略結婚という、俗世を離れたがるだけの事情があった。高貴な女と叙任の儀式は行うものの、相手の方も騎士の本心を分かった上で、友人と変わらない関係性を築く。男達も、家柄や容姿に自信のある者達が、名誉欲しさに入団を志すのが大抵だ。

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