
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
はらわたが煮え返る思いがした。
私達を駒同然に扱ってきた公爵にも、それを不幸とも感じないで、今も涼しい顔をして、悪びれもしないアレットにも。
「だけど、……」
まただ、と、思った。
アレットは私に敵意を向けている。初めて庭園で見かけた時も、彼女は私を度外視していた。今も私を家族として認めていない。
「お姉様に、本気になったの。私」
「え……」
「私が嫁がされることになっていた人は、悪い人じゃない。でもお姉様以上の人はいない。どこにも。だから貴女が死ねば良かった。何度も神様に願ったわ。事故なら殺してもお咎めはない、貴女についてはそう聞いていた。私は本当にそうなれば良いって願い続けていた。なのに……」
「アレット様!」
私に掴みかかってきたアレットを、付き添いのメイドが止めに入った。
「私を責めるならあんたが死んでよ!結局あんたを助けるために、お父様達はお姉様を見捨てたんでしょ?!」
「アレット様、イリナ様はまだお身体の具合も優れず──…」
メイドにアレットを任せて、私はリディ様を探した。
広い庭園、いくつもの部屋が並んだ屋敷──…オーキッド家の私有地をメイドの手引きなしでも歩けることがあったのは、私が昔、ここに住んでいたからだ。コスモシザの親族に預けられていた時期があったのではない、私は生まれた場所にいただけだった。
その勝手知ったる屋敷のバルコニーから、私は裏手の庭先にリディ様を見つけた。
