
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
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施錠された独房で、私の両腕はわざわざ吊り上げらていた。長時間に亘って力を抜けば、鎖に繋がれた手首まで血が通わなくなる。
廃屋にイリナが入れられた頃、私はリディのために舌を噛み切ることを断念した彼女を見下していた。こんな人間を騎士にしたからコスモシザは旗色が悪くなったのだと、蔑みさえした。
しかし私は、死ぬ自由も戒めていたイリナの気持ちが、今なら分かる。おそらく丸一日以上眠れていないせいで、正常な思考を失くしかけているからだ。…………
「おい」
顔見知りの役人達が、鉄格子を開けて立ち入ってきた。
高圧的なその仕種は、それまでオーキッド家の長女に対して媚びへつらってきた彼らと同一人物とは思えない。
役人の一人が角材を私の喉に突きつけて、顎を打った。
「さぁ自白しろ。俺達に手間をかけさせるな。お前はチェコラスの味方である振りをして、コスモシザの女神を信仰していた。敬虔なクリスチャンではないと聞く……違うか」
「女神を信仰した覚えはない」
「嘘をつくな!!ラシュレ……罪は重いぞ。アイビー家の血を引きながら出自を偽証し、正当なオーキッドの娘に対する不敬罪、イエスを貶め、その上コスモシザの王女とは内通していたそうだな」
