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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「お前は、軍人にしては傷一つない身体をしていたな」


 怪しげな器具を握った役人の口元に、下卑た笑いが浮かぶ。


「痛みに耐性はないんだろう。これを使っても、まだあの王女とは何もなかったと言い張れるか?」


 役人は私のシャツに刃を入れた。

 ボタンが外れて前がはだけた私の首に、今しがたの両端フォークをつけた革ベルトが巻かれていく。

 異端者のフォークだ。尖鋭な両端が喉と胸骨を圧迫し、顎を引けば肉を突き刺す自白強要のための器具。

 死には至らないにしても、異端審問の対象者が追い詰められるというだけあって、頭を動かすまでもなく徐々に痛みが迫ってくる。


「どうだ。お前も王女も有罪か?」

「……リディに関して、お前達に答える義務はない」

「口の利き方をわきまえろ!!」


 肩が鈍い音を立てた。

 角材を構えた役人が、下着だけをつけた私の上体を強打する。一晩経って忘れかけていた傷が疼き出す。

 彼らの言う通り、衝撃に耐える訓練はしてこなかった。
 人は無痛になれない。もとより傷みを恐れるくらいなら、相手に剣を向け、時として死に至らしめるような役目を担うべきではない。

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