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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音


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 来る日も来る日も役人達は、リディと私との間に言いがかりをつけて、殴る蹴るを繰り返していた。罪が重いほど見物になる処刑が認められるからと言っては、器具の責め苦に呻く私を嘲笑う。

 腕は吊るされたままだ。通常ならこれだけで気がおかしくなるだろうが、深い眠りに落ちない分、余計な夢を見ることがなくなった。

 殺戮してきた兵士達の断末魔、目を剥いて咆哮を上げて息絶えていく最期の顔──…彼らを斬り、貫き、撃ち抜いてきた手の感触が、夢に落ちれば蘇る。彼らの霊が私にまとわりついてきた。一人を殺すということは、その近親の者達の未来まで奪うということ。血の涙の途方もなく広がる海が、私の夢を赤く染めた。
 特にイリナを任されてからは、彼女の亡骸まで現れた。私は彼女を精神的に殺していた。私自身の感情も封じて。あの裸体を見ても何も感じないほど、心を凍らせておくしかなかった。


 足音が近づいてきた。正確な時間は知ることが出来ないにしても、今日も役人達の来る頃だった。

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